民間(七会)連合協定 工事請負契約約款委員会について
民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会は、一般社団法人日本建築学会の前身の建築學會、昭和19年(1944)に解散した建築業協會、一般社団法人日本建築協会の前身の日本建築協會、公益社団法人日本建築家協会の前身の日本建築士會の4団体を構成団体とする請負契約書案聨合調査會として発足し、大正12年(1923)に建築工事請負規程が制定されました。その後、昭和23年(1948)には解散した建築業協會に代わり一般社団法人全国建設業協会の前進となる当時の全国建設業協会が委員会に加わり、更に様々な変遷を経ながら四会連合協定工事請負契約約款委員会となり、さらに構成団体が七会に増えて、令和元年(2019)までは民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款委員会、さらに令和2年(2020)からは旧四会を七会に変えて、民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会となるに至っています。そして、工事請負規定が制定されてから本年が100年目となります。
本会で発行している工事請負契約約款は、一貫して民間建築工事のための請負契約の条項について、建築関係諸団体による検討と合同討議を経て制定し、追加・改正してきたものです。
この約款には2つの特徴があります。1つは制定当初から立場の異なる諸団体から選出された委員会メンバーによる調査と対等な立場にたつ合同討議によって作成、改正してきた伝統があります。意見や利害の異なる諸立場間の、団体レベルにおける自治あるいは自律的協働の一環であったと見ることもできます。
もう一つの特徴として、工事請負契約の当事者である建築主と請負者のほかに、建築主からの指名、委託を受けて工事契約の円滑な履行のために協力する者を監理者と呼び、この約款使用上の重要で不可欠な前提と位置づけております。
しかし、この約款を取り巻く環境、さらには世界の建設市場は激変しており、建築工事の発注・契約方式も多様化の一途をたどっております。そこには建築工事に関わる建築主、設計者、監理者、請負者の果たすべき役割と責任が多様化しており、それらを規定する契約ならびに契約約款とのずれが少なからず生じているように観察されます。
本約款委員会といたしましては、広く支持を受け、使用されてきたこの約款が民間建築工事の健全で公正な契約関係の発展に役立つことを願うとともに、その使命を重く受けとめ、ささやかながらもその役割を果たすべく今後とも努力して参ります。また、国内外ならびに新築・修繕を問わず建築工事の発注・契約方式が多様化する中、建築工事請負に関わる領域に軸足を置きながらも、建築工事における約款の位置づけ、新しい約款のあり方などについて、研究して参る所存であります。現実にも、小規模建築物・設計施工一括用、リフォーム、マンション修繕などの約款はすでに約款委員会として制定しており、現在は改修工事約款の制定に力を注いでいる状況であります。
さらに申しますと、東日本大震災の復旧・復興、東京オリンピック対応などのために新しい発注・契約方式が出現しております。また、平成29年(2017)に成立した改正民法は、令和2年(2020)4月1日から施行され、本会の工事請負契約約款においても改正をしたところであります。これらの動きに呼応した発注・契約方式の検討も急務であります。
そのためには、今の七会をコア組織としながらも、もっと多くの関連団体、行政、専門家からも参加を得て、大きな仕掛けの組織母体をつくる必要があると考えております。
今後ますます、建築工事契約の適正なあり方に関心を寄せられる諸賢各位のご理解とご鞭撻をいただき、ご助言等をたまわりながら、建築生産社会の一員として課せられた責務を全うしていきたいと考えております。
令和5年(2023)6月27日
民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会
委員長 古 阪 秀 三
本委員会設立の過程
建築物の複雑な工事請負契約に際して、明治の後半から明治29年(1896)制定の民法の請負契約規定などにより、工事物件ごとに個別の書類を作成し契約されていましたが、不十分な内容とも言われていました。明治44年には建築學會が建築請負契約書と工事請負規定を公表するなどの動きもありましたが、大正に入り多くの工事に共通して使える標準的な契約関係書式を作成する必要性が高まる中で、大正12年(1923)建築學會、建築業協會、日本建築協會、日本建築士會の4団体が請負契約の独自規程や意見などを持ち寄り、聯合決定として工期、金額、図面・仕様書などによる工事条件を明確に規定した「契約書」と契約においての条項を定めた「建築工事請負規程」を制定しました。これが本委員会の設立母体であり請負規程制定の始まりです。
その後、昭和23年(1948)には解散した建築業協會に代わり全国建設業協会が加わり、昭和26年(1951)に「四会協定 工事請負契約約款」に改称、改正を行い、昭和56年(1981)には建築業協会、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会などが新たに加入し、平成9年(1997)には「民間(旧四会)連合協定 工事請負契約約款委員会」に改称し、各団体からの構成委員による約款改正や解説書の発刊などのほか広範なテーマについて調査研究活動を行ってきました。
平成29年(2017)に成立した改正民法が令和2年(2020)4月1日から施行されたことに基づき、本委員会の工事請負契約約款を改正し、本委員会名も民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会に改称したところであります。
本委員会の役割
本委員会は、民間建築工事における代表的な工事請負契約約款・契約書式として、社会情勢の変化、関連法令や基準など制定・改廃、建築技術の進展などに対処し、契約・約款に係わる調査・研究・検討を重ね、常に約款・契約書式の公正と契約の適正化に努めるなど、その役割と普及活動に努めています。
最近では、さまざまな建築工事の発注方法に適応した「小規模建築物・設計施工一括用工事請負契約約款、同契約書式」、「リフォーム工事請負契約書類」、「マンション修繕工事請負契約等契約書類」などの発刊、改正等をしております。
工事請負契約書と約款の意義
工事請負契約の締結に当たって契約書と約款は、一体の契約書類として欠かせない重要な役割を持っています。
「契約書」は、建設業法や民法などで規定された条項を満たすとともに約款、設計図書に基づいて発注者と受注者間で契約することを明記しています。
「約款」は、契約に定められた一つ一つの条項であり、その条項は契約に当たっての必要条件や想定されるリスクへの処置など、当事者間の権利と義務、役割と責任、対処の仕方などについて規定しています。
この二つの契約書類は、健全で公正な契約に役立つ信頼性の高いものを目指しています。
本委員会概要
- 名称
- 民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会
- 住所
- 〒108-0014 東京都港区芝5-26-20 建築会館内
- 電話番号
- 03-3455-3109
構成団体
一般社団法人 日本建築学会 https://www.aij.or.jp/
一般社団法人 日本建築協会 https://www.aaj.or.jp/
公益社団法人 日本建築家協会 https://www.jia.or.jp/
一般社団法人 全国建設業協会 https://www.zenken-net.or.jp/
一般社団法人 日本建設業連合会 https://www.nikkenren.com/
公益社団法人 日本建築士会連合会 https://www.kenchikushikai.or.jp/
一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会 https://www.njr.or.jp/