講習会でのQ&A
目次
【1】工事請負契約書について
- Q 監理者欄の記名押印者は開設者の代表者とのことでしたが、管理建築士の記名押印でも有効か。(東京①)
- A この記名押印欄は、建築士事務所の開設者が、監理業務を委託されていることを証するために押印するという位置づけです。本来は代表者でないとだめですが、当該管理建築士が、代表者から確認権限(押印権限)を授権されている場合にはその者の押印でも有効です。
- Q 監理者記名押印が無い場合にトラブルは起こるのか。法的に問題はあるのか。(東京①)(大阪)
- A トラブルは起こり得ます。
監理業務委託契約における監理業務の内容と本約款に基づく工事請負契約の監理者の役割(業務)に相違が生じる場合があり、その場合、ここに押印し、その相違(実際に委託された監理業務と本約款第9条に定める監理業務との相違)を、発注者・受注者・監理者間で確認することで事実上、トラブルを防止することができます。強制力がないため押印してもらえないのならやむを得ません。ただし、監理者は、契約当事者ではないので押印してもらえなくても請負契約の成立という意味では問題ありません。
なお、この監理者の押印の趣旨は、解説書P33にも記載のあるとおり、発注者から委託を受けた監理者が誰であるかを明確にするためにのみ、つまり発注者と監理業務委託契約を結んでいるのが誰であるかを証するためにのみ、この契約書に記名押印することにしたものです。したがって、ここに記名押印したからといって、監理者が、発注者又は受注者に対して何らかの義務(トラブル防止義務)を負担するものではありません。 - Q 契約書の印紙の割印には監理者の押印は不要か。(富山)
- A 印紙の割印とは、消印のことと思われますが、消印は印紙が再使用されないためのものなので、契約当事者である発注者又は受注者が消印してあれば、監理者の押印(消印)は不要です。
- Q 解説書25Pの共同発注者が連帯債務を負う解説について、契約書で共同発注者それぞれの持分金額が記載されている場合は、代金支払債務の部分はそれぞれの持分の分割債務となるのか?(名古屋)
- A 解説書では商法511条の規定に触れており、商行為として請負契約を締結している場合には、特約がない限り、原則的には連帯債務になります。もっとも、特約として、契約書において共同発注者それぞれの持分が記載され、かつ持分に応じた分割債務とする旨が明記されていれば分割債務になると考えられます。
- Q この契約の証として本書1通を作成し、発注者及び受注者が記名押印して、正を○○が、その写しを○○が保有した場合の有効性はどう考えたらよいか?
工事請負契約書に貼付する印紙は、発注者・受注者それぞれに必要と思うが、受注者のみ印紙を貼付し発注者はそのコピーを使用した場合、法的(税法上)にどのような問題が生じるか?
(大阪)(富山)(新潟)(東京②) - A 契約の成立・効果については問題ありませんが、建設業法第19条1項において「建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面にして、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。」と規定されていますので、本書を1通しか作成せず、一方がそのコピーのみを保有することでは、同条の要件を満たさず、建設業法第19条違反になる可能性があると思われます。
- Q 仮に契約書を2通作成せず、1通作成し「原本を発注者が所持し、写しを受注者が所持」とした場合は違法か?また違法の場合の処罰は?(新潟)
- A 建設業法第19条に違反します。(Q5の回答参照)
建設業法第19条に違反した場合、受注者は、建設業法第28条により指示処分の対象となります。 - Q 民法では口頭でも契約が成立するが、建設工事は、建設業法にて書面契約で成立と理解して良いか?(名古屋)
- A 講義内容にあったように、私法上、請負契約は口頭で成立しますが、公法としての建設業法第19条では、書面による契約でないと業法違反になるとしています。
- Q 注文書請書のみ取り交わされ、「工事約款に従う」との文言のみ記載され契約書に約款が添付されていない場合に、約款の各条項が適用されるのか。(東京②)
- A 適用をめぐって争いになる可能性があり得ますので、約款は必ず添付する必要があります。
なお、国交省では注文書・請書で契約する場合でも建設業法違反にはならないとしていますが、その場合でも法第19条の法定記載事項を記載した文書を添付する必要があります。(平成1 2 年6 月2 9 日建設省建設経済局建設業課長通知(建設省経建発第132号)「注文書及び請書による契約の締結について」末尾掲載参照。) - Q 契約書を締結する前に内示書を受領して工事に着手した。着手より後に日付を遡って契約書を締結した場合、問題はありますか。(東京②)
- A 一般に、着工は、工事請負契約の締結を前提とするため、契約書を取り交す前に着工することは、原則として、建設業法(第19条)違反と考えられます。これは、発注者から予め発注内示書や着工指示書を受領していた場合でも同様です。
- Q 解説書35頁-契約書における、契約上有効な書面・図面の列記について、一般的には優先度の高い順にすべきと考えるが、そのようなルールはあるか?(大阪)
- A 本約款では、契約図書の優先関係については明記していません。なお、解説書P24を参考にしてください。
- Q 解説書及び講習会の説明の中で、契約書に押印する印鑑は必ずしも登録印(実印)である必要はないと言っていたが、会社印のみでもいいのか。(東京②)
- A 契約書には代表者又は代表者から権限を与えられた者が署名又は記名押印することになっています。この場合の印は、個人の場合、実印である必要はありません。ただし、法人の場合、契約書の真正(契約の成立)が争われた時に問題となるので法人代表者又は権限者としての印鑑の押印が必要と考えます。
- Q 工事請負契約書の発注者・受注者・監理者の記名押印の記名はパソコンで記載し、押印のみでも有効か。(仙台)
- A 基本的には問題はありません。ただし、本委員会の契約書書式を使用するのが望ましいと考えます。
- Q 契約書の書式はそのまま使用しなければならないか?例えば、保証人の欄は残すべきか?
また、当事者同士で、必要ないと判断した項目は削除しても良いのか? (大阪)(東京②) - A 建設業法第19条の法定記載事項を削除するのでなければ修正して使用しても構いません*1。
保証人については、保証人を立てないことを両当事者で合意している場合は削除しても構いません。
*1 建設業法第19条の法定記載事項の中には、同条第1項第4号(前払い等の支払い)、第9号(資材提供、機械貸与等)、第12号(瑕疵担保履行の保証契約等)の規定にあるように、当事者間で当該事項を合意した場合にのみ、契約書に記載することが義務づけられている記載事項も含まれます。この3つの記載事項については、当事者間で合意しない場合は当然契約書に記載できませんので、その場合当該記載欄を削除しても構いません。(以下「法定記載事項」と言った場合は、この趣旨をいいます。) - Q 建設業法上必要とされる14項目のうち、締結しようとする契約に該当しないもの(ex前払いや部分払いに関する条項)については、「該当なし」等何らかの記載をする必要があるのか。(東京②)
- A 建設業法第19条記載の14項目について、契約に盛り込むか否かを当事者の合意に委ねている項目(4号、9号、12号)については、当事者間で合意しない限り、契約書に記載する必要はありませんただし、後日の紛争防止のためには、「該当なし」としておくことが望ましいと考えます。
- Q 受注者・発注者の双方が合意の上で作成した任意の契約書と本約款とを組み合わせて使用することは可能か(著作権上の問題等はないか)?使用できる場合、使用する上での注意事項について教えてほしい。(広島)
- A 本契約書式及び約款には、本委員会に著作権があります。契約書式については使用者が基本的内容は変えずにワープロ化して使用することを認めているに過ぎませんので、別途任意の契約書と組み合わせて使用する場合は、差し控えてください。
- Q 工事約款を設計・施工では使用できないと解説書に書いてあるが、この場合約款の取り扱いはどうすればいいのか。(東京②)
- A この約款は、施工者と設計者・監理者は別人格を想定していること、及び工事請負契約専用の約款であり、設計業務及び監理業務に関する規定を欠いています。したがって設計施工一括契約での使用は前提としておりません。
- Q 工事請負契約は、すべて総価契約なのか。(大阪)
- A 請負契約が全て総価契約になるわけではなく、請負契約には総価契約(ランプサム契約)、単価契約、実費精算契約などがあります。ただし、本約款では、総価契約を採用しており、それに基づいて条文内容、構成を決めています。
【2】契約書式について
- Q リサイクルの分別解体等方法欄で、「手作業・機械作業の併用」の場合、理由を書く欄があるが、理由は必ず書かないといけないのか。(富山)
- A 手作業・機械併用の場合は、理由を書く必要があります。解体は、原則として手作業で行う必要があり、機械を使用するには理由が必要であるためです。その理由についても、単純に「工期短縮」では認められず、足場を架設しても、屋根がすべりやすいとか、腐朽化していて危険等の理由が必要です。
なお、念のため、環境省又は国交省に確認してください。 - Q 書式の解体工事云々に関する書面の要不要の判断はリサイクル法に該当するか否かの判断で良いか?
同上の書面に(建築)と(土木)があるが、建築工事(新築)に外構500万円以上の工事がある場合は両方作成するのか?(名古屋) - A 別紙書面は、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)の対象工事である場合に作成する必要があります。
なお、建築工事(新築)の外溝工事の場合、(建築)面の「⑥その他」欄を利用して記載することが可能です。
なお、念のため、環境省又は国交省に確認してください。 - Q 再資源化等に関する~基づく書面で、工事請負契約書と約款を一体化するとの説明があるが、どの法律のどの条文を根拠としているのか。(東京②)
- A 「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(以下「建設リサイクル法」という。)第13条等並びに建設業法第19条第1項に基づきます。建設リサイクル法第13条では、「建設工事の請負契約の当事者は、建設業法第19条第1項に定めるもののほか、分別解体等の方法、解体工事に要する費用その他の主務省令で定める事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととなっていますので、約款添付の別紙書面に必要事項を記載し、契約書類として一体化する必要があります。
- Q 新築住宅に係る特定住宅瑕疵担保履行法にかかる資力確保措置の特約は別紙を使用すべきか?(大阪)
- A 特定住宅瑕疵担保履行法に基づく資力確保措置の内容については、本契約書では「添付別紙のとおりとする。」と規定していますので、同封の別紙書式による方が宜しいと考えます。
なお、必ずしも同封の別紙書式による必要はありませんが、この項目は、建設業法第19条第1項第12号の法定記載事項になることから、該当し作成した場合は契約書と一体とする必要があります。 - Q 仲裁合意書・建設工事に係る資材の再資源化等に関する書面・特定住宅建設瑕疵担保責任の履行に関する特約、以上の書類を契約書に綴じ込む順番を教えてほしい。(参考例で)(仙台)
- A 決まりはありませんが、契約書関係書式の書式一覧の順番が適当と考えます。
【3】逐条内容について
〔第1条 総則〕
- Q 第1条の2(C)の但し書きの意味は?告示15号等との整合性という改正の目的から考えると、浮いて見える。(東京①)
- A 構造、設備の計算書は、設計図書(設計図面及び仕様書)を作成するうえで必要な計算を行うものであり、通常はその結果は設計図書に反映されると考えられます。したがって、受注者による工事施工は、設計図書に基づいて契約通りの工事を行い、設計図書のとおりに施工されているかを確認して発注者に引き渡せば足りると考えられます。
- Q 「請負契約」について「請負者」が「受注者」になっているが、何故「受注者」の文言となっているのか。(富山)
- A 以前は、「甲」「乙」であったが、平成22年7月26日に国土交通大臣の諮問機関である中央建設業審議会において、「発注者:甲」が「請負者:乙」に優位するという印象を与えているおそれがあるとして、建設工事標準請負契約約款が「発注者」「受注者」の呼称に変更になったことから、それに合わせて、本約款においても平成23年5月改正で変更したものです。(解説書P.233参照)
- Q 第1条第6項の書面での協議・承諾・通知・指示の原則ルールには、Eメールも含んで考えて良いか?(大阪)
- A 約款において「書面をもって通知する」とか「書面による承諾」など書面性が明記されている場合は、「書面」=紙ベースで考えてください。将来的には、会社法等の法令にあるように、「書面」=「電磁的方法による場合も含む」と約款上表記してEメール等も許容するかどうか今後の検討課題と考えています。
なお、本約款は、第1条第6項で書面主義の原則を採用していますが、その例外として口頭による場合はもちろん、ファクシミリやEメール等でも有効と考えられます。 - Q 設計事務所が設計を行う工事を請負うと図面が100頁ぐらいある。その中に構造計算書もあるが、これらは契約図書に含めなくても良いのか?(大阪)
- A 構造計算書の内容は、通常は設計図書に反映されると考えられ、そのことから、本約款第1条の2(用語の定義)においても、「設計図書等」に含まれないと明記されていますので、本約款では契約図書を構成しません。
〔第4条 請負代金内訳書、工程表〕
- Q 請負代金内訳書の位置付けを教えてほしい。(大阪)
- A 本約款では、総価契約(ランプ・サム)を前提としていますので、個々の項目ごとに単価を示した請負代金内訳書は、意味を持たず、契約の一部を構成しません。ただし、約款第29条により、減額変更の場合の単価の基準となります。
- Q 契約書に請負代金内訳書を綴じ込んだとしても正式な書類とはならない根拠を教えてほしい。(大阪)(新潟)
- A 約款第1条の2(用語の定義)にあるとおり、「この契約」は、契約書、約款、設計図書等を内容とするものであり、請負代金内訳書は含まれていません。解説書62Pを参照ください。
- Q また工事請負契約書の一部として、請負代金内訳書を正式に含むことはできるのか?(大阪)
- A 特約をもって、請負代金内訳書が「この契約」に含まれる(契約の一部を構成する)ということ、その効果や役割を特約する必要があると考えます。
なお、その場合は、本約款が総価契約であることを前提としていることとの整合性に注意する必要があります。 - Q 契約書に請負代金内訳書を貼付した場合、あくまでも参考図書であることを契約書の中で明示するための記載方法があれば教えてほしい。(大阪)
- A 契約書の「その他」欄に、『請負代金内訳書は本契約書と一体として編綴した場合であっても、本契約の一部を構成しない(契約図書とならない。)』などの記載例が考えられます。
また、請負代金内訳書を、契約書・約款等及び設計図書と共に一体として綴じ込む場合は、誤解の無いように、請負代金内訳書自身に「本契約の一部を構成しない」と表記するなどの工夫も必要です。 - Q 「請負代金内訳書」は、拘束力は無いと説明されたが、現実、増額、減額においては、契約と同様の扱いを設計事務所から指示される。どのような対応をしたらよいか。(富山)
- A 主に問題になるのが増額の場合だと思われますが、約款第29条(2)では、「請負代金額を変更するときは、原則として、この工事の減少部分については監理者の確認を受けた請負代金内訳書の単価により、増加部分については変更時の時価による。」と規定しています。特約があるなどの特別の事情がない限り、この約款の規定の内容で履行するように、発注者に求めることができます。
なお、内訳書を、契約書・約款等及び設計図書と共に一体として綴じ込む場合は、誤解の無いように内訳書に「契約対象外」と表記するなどの方法もあります。 - Q 請負代金内訳書については、契約書に一体化することとなっていないが、発注者と請負者で合意した内容で内訳書が作成されているにもかかわらず、当該内訳書の内容と設計者が作成した設計図書(契約図面)との内容に食い違いがあった場合でも、設計図書が正しいということになってしまうのか。(東京②)
- A 請負代金内訳書は、契約関係書類に含まれないが重要な書類であることにかわりありませんが、設計図書は、契約図書ですから、請負代金内訳書の内容と設計図書の内容に相違があれば、基本的に設計図書を優先することになります。なお、もし発注者と請負者で設計内容を変更する合意をしたというのであれば、基本的に合意が優先されますが、請負代金内訳書の記載は、当該合意の証拠になる可能性があります。
〔第9条 監理者〕
- Q 監理者が説明用図書を交付せず、受注者の工事の進行に支障が発生した場合に受注者が講じ得る対策としては、発注者に通知の上改善を促す程度か?(受注者と監理者には直接の契約関係がないため質問する次第)(東京①)
- A 説明用図書は必ずしも交付しなければならないものではありません。本当に必要なものであるかどうかを受注者が確認した上で、交付が必要であると認められる場合には、設計図書の記載内容がふめいということですので、発注者に対してその旨を告げるべきです。本約款第1条(3)で、発注者は監理者に対して、工事の円滑遂行のために協力を求めることが規定されていることから、受注者はこの条項に基づき発注者を経由して監理者に確認を促してもらうか、あるいは第12条(工事関係者についての異議)(2)(3)に基づいて発注者に対して異議を申し立てたり、必要な措置を取ることを求めたりすることも考えられます。
- Q 第9条1項の条項の「他の条項で定めるほか」について、他の条項を見た場合、例えば第23条3項の「発注者が本項の業務を監理者に委託した場合は、監理者」では、委託の有無が分からず、委託された場合は第1条4項により受注者に通知するとされていて非常にわかりづらい。いっそ、発注者と監理者の間の委任契約の写しの提示を発注者に求めたほうがいいのでは?(東京①)
- A 実務の対応としては、発注者監理者間の監理業務委託契約書の写しを、できれば請負契約締結以前の現場説明書や質問回答書受領時に、発注者に求めることで足ります。
- Q 発注者と監理者間の設計監理契約で、「工事約款第9条は除く」という特約(工事約款第9条は適用しない、という特約)を入れても、発注者と受注者の請負契約において、この工事約款を使用することで必ず、当該監理者に第9条の義務は発生するのか。(東京②)
- A 本約款を使用したからといって、監理者に当然に第9条の監理業務を行うという義務が生じるわけではありません。
ただし、当該発注者は、設計監理契約における当該特約の内容を受注者(請負者)に説明する必要がありますが、監理者が契約書に押印している場合は、監理者自身が施工者に対し、第9条について異議を述べておく方がよいと思われます。
なお、今回の改正により、第9条の内容と国交書告示第15号の内容はほぼ整合(統一)するようになっていますので、四会設計監理約款を使用する限り、特約で「工事約款第9条は除く」とする必要はありません。
〔第16条 設計及び施工条件の疑義、相違など〕
- Q 第16条4項について、「工事内容の変更について協議の上、必要と認められる場合は工期及び請負代金を変更できる」というふうに、受注者の請求権を担保したほうがいいのではないか。(東京①)
- A 第16条第4項の趣旨は、解説書P.102に記載の通りです。
約款表記の問題については、ご意見は分かりますが、約款の他の条項(部分)の表記とのバランスも考えて、現行の表記となっています。
〔第17条 工事用図書のとおりに実施されていない施工〕
- Q 第17条工事用図書のとおりに実施されていない施工について
本条にあるとおり、工事用図書と工事との照合・確認ということであると、建築士法の定める「工事監理」と比べて、責任が増大していると考える。民法上の不利益のみならず監理者は処罰を受ける可能性が高く片務的である。(東京②) - A 本条による工事用図書と工事との確認・照合を含めて、本約款で規定する監理者の業務については、告示第15号の標準業務及び四会連合設監業務約款の基本業務に基づいています。したがって責任が増大しているわけではありません。
- Q 第17条(6)、第27条(6)にある通知とは「書面でなければならない」に当たらないと考えてよいか?(口頭であっても通知したことになるのか?)(広島)
- A ご指摘の条項では、必ずしも「書面による通知」と明記していませんので、口頭であっても有効な通知となります。しかしながら、この約款では,第1条(6)において「原則として,書面により行う」として書面主義の原則を定めています。紛争予防の観点から,書面化しておくことが望ましいと考えます。
〔第23条 完成、検査〕
- Q 23条第2項について
「検査に合格しないときは、工期内又は監理者の指定する期間内に補修・改造して…」とあるが、解説書P33にあくまでも契約は発注者・受注者の2者間契約であると説明していることから、23条の2項の条文は、「検査に合格しないときは、工期内又は監理者の忠告を容れて発注者が指定した期間内に補修・改造して…」とすべきではないか。工期について発注者の事情も大きく関与することから監理者だけの判断で指定すべきものではないのではないか。(東京②) - A 発注者検査において、不合格となった場合、その部分・部位を修補・改造して、設計図書のとおりに直すことは極めて技術的なマターであることから、その修補・改造に要する期間についても、監理者が指定することとしたものです。
因みに、「監理者の指定する期間内」といっても、約定工期の期間内で指定されるものであり、監理者が勝手に約定工期を延長するものではありません(解説書P.118参照)。したがって発注者の関与を不要としたものです。
〔第26条 請求、支払、引渡し〕
- Q 「工事引渡し日」は、検査に合格した日とするが、修繕、手直し工事が未完了の場合、工事の引渡しとならず、工事代金の請求権は無いのか。 (富山)
- A 工事の完成は、検査に合格することが必須ではなく、修補・改造の内容、程度にもよりますが、契約(設計図書)で決められた工事(工程)の最後の工程までが一応終了した時点をとらえて完成とする裁判例があります。(東京高裁昭和36年12月20日判決など)。したがって、修補、手直し工事が未了であっても、実際に引き渡している以上、受注者は工事代金を請求できると考えます。
〔第27条 瑕疵の担保〕
- Q 瑕疵担保期間について
期間が民法より短くなっているが、今後、民法と同じ期間に改正する考えはないのか。(大阪) - A 瑕疵担保期間の定めについては、改正民法との関係もあり委員会での今後の検討課題となっています。
- Q 同条5項の滅失に対する申立て「6ヵ月」はどのような根拠により設定されたものか?(大阪)
- A 特に明確な根拠はありません。この期間についても、Q1と同様に、改正民法との関係もあり、委員会での今後の検討課題となっています。
- Q 18年目のタイル剥離事故について、不法行為責任と瑕疵責任はどうなるか?(大阪)
- A 本約款では、受注者に故意・重過失があった場合でも、瑕疵担保期間は最長10年間としています。したがって、18年目に発現した不具合については、本約款に基づいて受注者の責任を追及することはできません。不法行為責任については、引渡しから20年以内であれば、民法上の不法行為責任を追及することは可能です(第709条、第724条)。
〔第28条 工事の変更、工期の変更〕
- Q 第28条第5項について、受注者が工期の延長を請求したが、発注者が拒否し、受注者が工期内に完成できず、発注者が遅延違約金を請求した場合、受注者は当条項を盾に違約金の支払を拒否することは可能か?(第30条に対抗できるのか?)(広島)
- A 発注者と受注者で協議しても結論がでないときでも,第28条(5)にいう「正当な理由がある」と判断されるときは、客観的に相当と認められる期間内は,工期遅延による責任を問われることはないと考えられます。
- Q 第28条の「工期の延長を請求することができる」、第29条の「請負代金額の変更を求めることができる」は、請求権、形成権のどちらと解釈すればいいか?(広島)
- A 変更請求権の法的性質については,学説上,請求権説と形成権説があるとされていますが,いずれにしても,この約款の各条項に該当する場合には,客観的に相当と認められる期間・請負代金の変更が認められるものと考えられます。
〔第29条 請負代金額の変更〕
- Q 物価上昇による増額が認められるように書いてあるが、そのような判例があるのか?
(解説書P188Q38)(東京①) - A 本約款第29条(1)e.又はf.の規定に基づいて物価上昇等による請負代金の増額が認められた裁判例については、本委員会では把握しておりません。
- Q 第29条請負代金額の変更が発生した場合の変更契約をする時期について、規定はあるか?
その都度?最後に纏めて?建設業法ではNGだが、実態にそぐわないこともあるのではないか。(大阪) - A 約款上、変更契約をする時期についての規定は特にありません。基本的には、変更事項に関し、双方が合意に達した時に、変更契約書を取り交すことになります。建設業法第19条では、変更契約をせずに、変更工事に着手することを禁止しています(国土交通省建設業課策定(平成23年8月)「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」)。
- Q 29条請負代金の変更について
発注者の事情により、着工が遅れ工期延長となったとき、例えば仮設に要した費用は、実費請求できるのか。(仙台) - A 本約款規定(例えば、第28条(4)又は第29条(1)b.)に従い請求は可能であると考えます。
- Q 請負代金額の変更理由でe、f号(インフレ条項、スライド条項)規定は、事由が発生後それぞれ何日以内に通知し、契約変更を行えば良いのか?請求に時効は無いのか?(札幌)
- A インフレ、スライド条項については、その請求方法等について、本約款では詳細には規定していません。案件により必要であれば個別の契約で特約することになります。実務的には契約書式の「7.その他」に具体的に記載する方法があります。請求の時効については、特約しない限りは民法(10年間)又は商法(5年間)の規定によることになります。
〔第31条 発注者の中止権、解除権〕
- Q 反社会的勢力排除条項は無いのか。(東京①)
- A 反社会的勢力の排除条項としては、第31条(2)h及び第32条(4)があります。
〔第34条 紛争の解決〕
- Q 仲裁合意はどのようなケースで締結すべきか?(福岡)
- A 仲裁を選ぶかどうかは個別の事情により、仲裁と訴訟、どちらが良いかということも、それぞれの考え方です。仲裁は、一審で決まり、仲裁判断は確定判決と同一の効果をもちますので、紛争が短期に解決します。また、非公開であるなどのメリットはあります。仲裁を選ぶ場合は双方の合意が必要ですので、紛争の解決手段の一つとして、仲裁という制度があることは、契約時に発注者に説明しておくことが必要だと考えます。そして、当事者間で十分に協議し、その対応(仲裁か訴訟かなど)を決めておくことが必要です。
【4】その他
- Q 秘密保持条項がないのはなぜか。(東京①)
- A 元々この約款には盛り込まれていませんでした。社会的に必要かどうか今のところまだ検討が必要であるという段階です。
なお、建設工事は元請、下請け、メーカーなど重層した構成で生産されるため、秘密保持の一般化が難しいと考えます。発注者と受注者の間に秘密保持の基本的な義務はあると思われますが、約款にどう反映していくか、下請け会社に対してもその義務を強いるのかという問題も出てくるので慎重に検討したいと思います。 - Q 設計・施工を同じ会社で行った場合に工事約款を使用するのはNGとなっておりますが、設監契約と工事契約を同じ会社でも分けた場合は使ってもいいのでは?(解説書P180Q2)(東京①)
- A 本約款は、設計と施工の分離の場合の契約を前提としていますので、設計施工一括契約での使用は前提としていません。設計施工一括工事の場合には、設計・監理と施工間に特有の問題がありますので、設計施工一括用の約款を使用するなどしてください。
- Q 大型物件を設計施工で受注する場合、設計監理契約は別途必要か?(福岡)
- A 平成27年の建築士法改正では、第22条の3の3で、延べ面積300㎡を超える建築物の新築に係る設計受託契約又は工事監理受託契約の当事者は、書面による契約を行うことが義務付けられました。また、建設業法第19条では、請負契約時に明示する事項として、「工事内容」が規定されています。このことから、設計契約後、設計を行って、工事の内容が確定します。したがって、手順的にも、公法の規定上も、大型物件では設計監理契約は別途必要であると考えられます。併せて、設計監理契約締結前に24条の7書面を交付しての重要事項説明も必要です。
なお、上記Q4でも述べたように、本約款は、設計施工一括契約での使用を前提としていませんので注意して下さい。 - Q 解説書P180-Q2で設計施工一括工事の使用を禁止しているが、P181-Q9では、約款の変更が容認されている。実際には契約書に特記事項を記載することで整合性をとって使用している。どのように考えたらいいか?(大阪)
- A 本約款は、設計・施工分離用です。したがって、設計施工一括の契約での使用は想定していないというのが委員会の基本的なスタンスです。
P180-Q9の回答では、当事者間で合意すれば約款を一部修正して使用することを例外的に可能としていますが、本約款の基本的な枠組みを変更するような修正まで認めているわけではありません。 - Q 発注者と契約する場合、「注文書」と「請書」で契約することが多いが、「契約書」で契約する場合と比較してデメリットを教えてほしい。(富山)
- A 国交省では、平成12年6月29日建設省建設経済局建設業課長通知において、一定の要件を満たす場合は建設業法第19条第1項に違反するものではないとしています。(末尾掲載通知参照。)
- Q 工事請負契約書を交わさず、注文書・請書で契約した場合、印紙は受注者のみの貼付で税法上の問題はないと理解しているですが、何か問題を生じる可能性があるか?(大阪)
- A 印紙税法上は、契約の成立を証する書面となる「請書」にのみ印紙を貼付するだけで足りると考えられますが、詳しくは国税庁又は税務署に確認して下さい。
- Q 独自の工事請負契約約款にて、注文者・請書に印紙を貼らないということが可能か?可能でない場合、グループ会社なら可能になる場合があるか?(大阪)
- A 通常の民間工事であれば、契約の成立を証する書面となる請書にのみ印紙を貼付することで足ります。これはグループ会社間の契約(取引)であっても同様に必要と思われます。詳しくは、国税庁又は税務署に確認してください。
- Q 請負代金額又は工期の変更があった場合に作成する変更契約書の様式はあるか。(仙台)
- A 委員会所定のものはありません。原契約書のどの部分を変更契約するか、変更契約書をどう作成するかなどは、当事者間で協議し合意のうえ適切に契約することになります。
- Q 小規模建築物約款を使用して、5000万円超の工事をした場合の注意事項は何か。(東京①)
- A 小規模建築物設計施工一括約款は、法定記載要件は満たしていますが、予測される当事者間のリスク対応等の条項や取り決めが簡略化されているので、大規模工事の場合に予想される複雑な場面に対応できる条項がない場合があり、注意が必要です。
- Q 小規模建築物約款の「小規模」の文言を消去してほしい。発注者からの印象が良くない。(仙台)
- A ご指摘は理解できますが、小規模約款は、従来の約款と異なりリスク対応条項が少ないなど、小規模建築物向けに適応した簡易で簡便な約款となっており、詳細・複雑な条項が必要な大規模建築物を対象とする大型工事には相応しくないため「小規模用」としています。
- Q 小規模建築設計施工一括約款を大規模建築物に適用できないか。また、大規模約款を制定する予定はあるか。(東京②)
- A 小規模用設計施工一括約款を大規模に適用するのは、契約の条件設定の規定内容(詳細性)が違うという差異があります。またリスク対応上の約款条項が簡易となっていますので大規模建築物での使用は望ましくありません。大規模建築物用の設計施工一括契約約款の策定に関しては、今後の検討課題です。
- Q 「リフォーム工事請負契約約款」は概ね500万円程度までの小規模リフォーム工事を想定しているとのことだが、それ以上の金額のリフォーム工事は「民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款」を使用した方が良いということか。
その場合、瑕疵担保期間がそれぞれの約款で相違するが、リフォーム工事でも金額が大きな工事は「民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款」の瑕疵担保期間を適用した方が望ましいということか。(富山) - A 本委員会のリフォーム工事約款は、工事金額が概ね500万円程度、すなわち、建築士による設計・監理業務を必要としない簡単な戸建て住宅の改装やマンション等の内装・設備等の改修をイメージしているので、それ以上の複雑な、建築基準法に係るリフォーム・改修工事には使用できません。
また、民間連合協定工事約款もリフォーム工事での使用を前提としていません。
なお、大規模リフォーム工事専用の契約約款の作成については、今後の検討課題です。 - Q マンションの大規模修繕工事の契約には、平成28年4月制定のマンション修繕工事契約約款が適しているのか?(大阪)
- A その通り。
- Q マンション約款を使用するには請負代金額の目安はあるか?(大阪)
- A 特に金額的な目安はありません。なお、マンション約款は、マンションの共用部分の修繕工事において実施される、外壁修繕工事、屋上防水工事、給排水管の更新工事等の大規模修繕工事での利用を想定しています。
なお、専用部分のリフォーム工事の場合は、本委員会の「リフォーム工事請負契約約款」を利用できます。 - Q 工事請負契約の条項の解釈について疑義が生じた場合、委員会に個別に問合せや照会することは可能か?(広島)
- A 個別案件に関わる相談や問合せには応じられません。
- Q 解体工事には工事約款は適用できないのでは。(解説書P180Q5)(東京①)
- A 解体工事は、「契約の目的物」「契約の目的物の引渡し」(第1条(2))が観念できないため、また、通常、解体工事では監理者を置かないことから、監理者の配置を前提としているこの約款を使用することはできません。解説書Q&A(P180Q5の回答)で記載の意味は、解体工事専用の契約書・約款を使用する必要があるという意味です。
- Q 元請・下請間契約での使用を前提としていない理由。元請・下請間では使用してはいけないのか。(解説書P180Q3)(東京①)
- A 本約款は、従来から元請負契約専用約款を前提にして、建設業法等の関連法令に基づき民間工事契約の必要な要件を踏まえた内容としています。このことは、監理者の存在を前提としていることからも明らかです。したがって、下請負契約には基本的に使用できません。
- Q 約款の無断転載禁止について、転記して注文書請書(自社書式)に載せてはいけないのか(契約書には著作権は適用されないのでは)?(東京①)
- A 本約款は、他の契約書式を含め、本委員会に著作権があり、工事ごとに一体を構成する所定書式として使用すること前提としています。コピー、転記等は避けて下さい。
なお、契約書・約款であっても、本契約書・本約款のように、約款委員会の長年の調査研究の成果を反映した条文内容、独自の条文配置で落し込んで構成した、極めて創作性・創造性の強い契約書・約款には、著作権があると考えます。 - Q 監理者に契約時に契約書のコピーを渡した方がよいのか?(大阪)
- A 基本的には、監理者も本契約書に記名押印しますので、第1条(4)及び第9条の監理者の業務を定めた本契約約款を含めて、監理者に交付又は貸与した方が望ましいと考えます。
- Q 契約書類にある、⑤特記仕様書とはどういうものか?請負代金内訳書とは異なるものか?(大阪)
- A 特記仕様書は、工事の一般共通事項や工種工事について、その仕様を列記した標準仕様書について補足事項を定めたもので、当該工事に特有な事項を特約として記載するものです。個々の項目ごとに数量・単価及び金額を示した請負代金内訳書とは異なるものです。
- Q 建設業法において契約書面の作成時期の記載はないが、工事完了後に書面を作成するのは問題があるか。(東京②)
- A 工事に着手した以上は契約は成立したと考えられます。したがって、工事着手時には契約書が作成されていることが必要です。契約書の締結(作成)は、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として工事の着手前に行わなければなりません。このことは、国土交通省建設業課策定(平成23年8月)の「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」の中で、書面による契約を義務付けている建設業法第19条を解説する「2.書面による契約締結」にも明確に記載されています。
- Q 契約書は、内容を網羅したものを会社のパソコンで作成し使用しても良いのか?
同じく、約款もコピーを使用して契約図書としても差し支えないか?(新潟) - A 本契約書及び約款については、約款委員会で著作権を保有しており、原則としてコピーなどして利用することを認めていません。なお、契約書については、そのままパソコンで作成し使用することを認めています。
- Q 万が一訴訟ということになった場合を見越して、双方が争う裁判所を指定しておきたい場合に、それを契約書に書くことはできるのか。どこにどのように書けばいいのか。(富山・後日事務局に提出)
- A 契約書の「7.その他」欄を利用して、以下のような特約をすることが考えられます。
「発注者及び受注者は、この契約に関して裁判上の紛争が生じた場合は、第34条(3)の定めに従い、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。」 - Q 今回の講義内容の動画や音声データ配布予定の有無について。(名古屋)
- A 現在予定していません。
- Q 大規模建築物設計施工一括約款は、今後作るのか。(東京①)
- A 必要性は増しているので、今後の検討課題と考えます。
- Q 解体工事約款は今後作るのか。(東京①)
- A 必要性は増していますが、作成するか否か今後の検討課題といたします。(東京①)
- Q 約款の英文化の予定を教えてほしい。(東京②)
- A 当委員会が直接発行する英訳版はありません。英訳化(英文化)については、今後の検討課題です。
- Q 民法改正に対応した約款の見直しは進められているのか。(東京②)
- A 現在国会に上程されている民法(債権関係)改正法案が成立すれば、当然約款の見直しが必要となると考えますので、委員会では既に検討を開始しています。
- Q CPDとは何か。(仙台)
- A CPD(継続能力開発:Continuous Professional Development)は、資格取得者などが技術力向上のため講習会などに参加し、それらの学習履歴を定量的に認定・記録し証明する制度です。公共工事の総合評価落札方式の配置予定技術者の技術力の評価項目になっています。
【参考】
設省経建発第132号
平成1 2 年6 月2 9 日
各都道府県主管部局長あて
建設省建設経済局建設業課長
注文書及び請書による契約の締結について
建設業法(以下「法」という。)第19条においては、建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際し、同条第1項各号に掲げられた事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととされています。
しかしながら、建設業者間の実際の取引現場においては、注文書及び請書の形態により請負契約が締結されている場合が多いことを踏まえ、この度、注文書及び請書の形態による請負契約に係る法第19条との関係について下記のとおり整理しましたので、貴職におかれましては、十分ご留意の上事務処理に当たられますようお願いします。
また、貴管下の建設業者に対しこの旨の周知徹底が図られるよう、併せてお願いします。
記
1 注文書・請書による請負契約を締結する場合において、次の(1)又は(2)の区分に従い、それぞれ各号のすべての要件を満たすときは、法第19条第1項の規定に違反しないものであること。
(1) 当事者間で基本契約書を締結した上で、具体の取引については注文書及び請書の交換による場合
① 基本契約書には、個別の注文書及び請書に記載される事項を除き、法第19条第1項各号に掲げる事項を記載し、当事者の署名又は記名押印をして相互に交付すること。
② 注文書及び請書には、法第19条第1項第1号から第3号までに掲げる事項その他必要な事項を記載すること。
③ 注文書及び請書には、それぞれ注文書及び請書に記載されている事項以外の事項については基本契約書の定めによるべきことが明記されていること。
④ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること。
(2) 注文書及び請書の交換のみによる場合
① 注文書及び請書のそれぞれに、同内容の基本契約約款を添付又は印刷すること。
② 基本契約約款には、注文書及び請書の個別的記載事項を除き、法第19条第1項各号に掲げる事項を記載すること。
③ 注文書又は請書と基本契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割印を押すこと。
④ 注文書及び請書の個別的記載欄には、法第19条第1項第1号から第3号までに掲げる事項その他必要な事項を記載すること。
⑤ 注文書及び請書の個別的記載欄には、それぞれの個別的記載欄に記載されている事項以外の事項については基本契約約款の定めによるべきことが明記されていること。
⑥ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること。
2 注文書・請書による請負契約を変更する場合において、当該変更内容が注文書及び請書の個別的記載事項に係るもののみであるときは、次によることができる。
① 注文書及び請書の双方に変更内容が明記されていること。
② 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること。
ただし、当該変更内容に注文書及び請書の個別的記載事項以外のものが含まれる場合には、当該変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付すること。