民間(七会)連合協定 小規模建築物・設計施工一括用 工事請負契約約款

令和5年(2023年)2月改正版

一般的な工務店が引き受ける、個人住宅や小規模な商業・事務所ビルなど、工事請負代金額が 5,000 万円程度までの小規模建築物の建設請負工事を想定しています。
設計合意書・工事請負契約書のほか、重要事項説明書、建築士法第 24 条の8書面など、本書式を利用することで、建設業法・建築士法に対応した契約書を作成することが可能です。

策定趣旨

当委員会では、既に民間建築工事を対象として、民間(七会)連合協定工事請負契約約款(以下「民間連合工事約款」といいます。)を発行し、我が国の民間建設工事のおいて広く使用されています。
この民間連合工事約款は、比較的規模の大きな新築建物の建設工事で、かつ設計者、監理者、施工者がそれぞれ異なる工事において使用されることを前提としています。
しかしながら、一般的な工務店等が請負う、個人住宅を中心とする比較的規模の小さな建築物の建設工事においては、受注者が発注者から設計・施工・工事監理までを一括して請負うことが多く、分離発注を原則とする民間連合工事約款は、設計や工事監理に関する定めを欠いており、当該工事の契約約款としては、必ずしも十分ではありません。
このように取引実態に合致しない契約約款を使用して契約を締結することは、当事者間において無用な紛争・トラブルを招きかねません。
そこで、当委員会としては、発注者・受注者間の対等な立場における公正な契約の締結を目指して、民間連合工事約款の調査・研究において培ってきた考え方・ノウハウを基に、上記発注形態に相応しい契約約款の策定が必要であると考え、検討を行ってまいりましたが、今般、小規模建築物における設計施工一括発注専用の工事請負等契約約款として「小規模建築物・設計施工一括用 工事請負等契約約款」を策定いたしました。
この契約約款は、基本的な考え方及び条文構成は民間連合工事約款を踏襲しながらも、設計施工一括形態といった取引の特殊性を考慮した内容となっています。
(注)この契約約款は、当委員会で策定し、2014年4月、(一社)日本建築学会、(公社)日本建築士会連合会、(一社)全国建設業協会、(一社)日本建築協会の4団体から発行された契約約款を、改正建築士法(平成26年6月27公布、平成27年6月25日施行)を踏まえ、当委員会で全面的な見直しを行い、新たに策定したものです。
この改正版から上記4団体から当委員会へ発行に切替えました。

利用範囲

(1)対象当事者
発注者は、建築主(建売事業主を含む。)で、受注者は、建設業の許可を取得しており、かつ建築士事務所開設の登録を行っている者(個人又は法人)です。
(2)受注の形態 
受注者が、発注者から、設計・施工・工事監理までを一括して引受ける工事が対象です。
(3)工事の規模等
一般工務店が引受ける個人住宅や小規模な商業・事務所ビルなど、一つの目安として工事請負代金額五千万円程度までの小規模建築物の建設請負工事を想定しています。
また、民間連合工事約款と同様、新築工事を前提としています。

※改正建築士法(平成26年6月27公布、平成27年6月25日施行)では、延べ面積が300㎡を超える建築物に係る設計受託契約及び工事監理受託契約に関しては書面による契約が義務化されましたが、本契約約款・同契約書式は、延べ面積が300㎡を超えるか否かにかかわらず、上記小規模建築物の建設請負工事に使用できます。

構成内容

本契約約款・同契約書式では、受注者が設計・施工・工事監理までを一括して受注することを前提に、第一段階は、設計契約書(設計受託契約)を取り交わしたうえで、調査業務、関係機関との協議、設計業務、建築確認申請代行業務など(以下、合せて「設計等業務」という。)を行い、設計等業務が完了した段階で、契約約款を添付した上で、施工と工事監理業務に関する工事請負等契約書を締結するという二段階の手続きを前提としています。

本契約書式 (仮)

  1. 小規模建築物・設計施工一括用 設計契約書(2部)
  2. 小規模建築物・設計施工一括用 工事請負等契約書(2部)
  3. 小規模建築物・設計施工一括用 工事請負等契約約款(2部)
  4. 重要事項説明書(1部)
  5. 工事監理報告書(1部)
  6. 小規模建築物・設計施工一括用 工事請負等契約約款・同契約書式「利用の手引き」(1部)

利用ガイド

目次

 

1.契約を締結するとき

(1)設計契約書

Q 設計契約書はどの時点で取り交わすのですか?
A 発注者と受注者が十分に話し合い、どのような建物にするかの仕様・構造等が概ね決まった後に、発注者が受注者に対して設計業務を正式に依頼することになったときに取り交わします。
Q 設計業務に関しては、特に契約書を取り交さずに、工事着手の段階で工事契約だけを締結することではいけないでしょうか?
A 改正建築士法(H26.6成立)では、設計受託契約及び工事監理受託契約に関し、延べ面積300㎡を超える建築物について、書面による契約が義務付けられました。したがって、設計業務に着手する前に設計契約を締結しなければなりません。
Q 私の発注する建物は、300㎡以下の建築物ですが、この設計契約書を使って契約しても良いのでしょうか?
A この設計契約書は延べ面積が300㎡を超えるか否かにかかわらず、小規模建築物(一般工務店が引受ける個人住宅や小規模な商業・事務所ビルなど5,000万円程度(目安)までの建築物)に使用できます。
Q 受注者に依頼する設計業務の内容はどのようなものがありますか?
A 設計契約書4.に(1)調査業務(2)設計業務(3)その他業務として挙げられています。設計業務は、最低限必要な基本業務を列挙してあります。調査業務には、敷地調査、境界立会、地盤・地質調査等がありますが、いずれもオプション業務ですので、チェックボックスを利用して必要により選択してください。
Q 受注者が設計等業務において作成する成果物(設計図書)にはどのようなものがありますか?
A 設計契約書5.では、平面図、断面図、立面図、設備図、仕様書を、受注者が必ず作成しなければならない、必須作成設計図書として挙げています。
これ以外の図面の作成を必要とする場合は、受注者と相談し、双方合意の上この欄に当該設計図書の種類を書き込んでください。
Q 設計等業務に従事することとなる建築士(建築設備士が従事する場合はその者も含む。)が途中で交代になりました(又は追加となりました。)。何かする必要がありますか?
A 改正建築士法(H26.6成立)では、300㎡を超える建築物に関しては、設計業務に従事することとなる建築士等の氏名、資格、登録番号等は契約書の法定記載事項です。交代変更、追加変更の場合であっても、発注者・受注者間で書面による変更契約を締結しなければなりません。(改正法第22条の3の2第2項)
このことは、工事監理者が交代、追加になる場合も同様です。
Q 設計業務が概ね完了しましたが、工事費で合意ができず、工事請負等契約書を締結できません。どうなりますか?
A 契約はここで終了となります。設計契約書10項で、設計業務における成果物等の取り扱いについて双方協議して決定することになります。

(2)工事請負等契約書

Q 工事請負等契約書はどの時点で締結するのですか?
A 設計契約書に基づく設計図書が完成し、当事者間で請負代金と工期が合意された時点で締結します。
Q 工事監理も受注者である工務店にお願いしてありますが、工事請負等契約書に工事監理に関しての記載欄がありますが、記載する必要がありますか?
A この工事請負等契約には、工事監理受託契約も含まれます。
改正建築士法では、工事監理受託契約にあたっては、工事監理業務の種類、内容及び実施方法、工事監理業務における工事と設計図書との照合方法及び工事監理の実施状況に関する報告の方法、工事監理に従事する建築士の氏名、資格、登録番号などを記載した契約書と取り交さなければなりません。このことは、施工を行う工務店に工事監理を依頼する場合も同様です。
Q 工事代金支払いは部分払いでも良いのでしょか?
A 一括払い(全額前払い、全額完成時払い)でも部分払いでも構いません。契約書には、契約時、中間時、完成時払いの記載欄を設けていますので、受注者と十分協議して決めてください。

(3)契約全般

Q 設計施工一括で請け負う戸建て住宅の工事ついて、これまで通り、民間連合協定工事約款を使用してはいけないでしょうか?
A 違法ではありませんが、民間連合協定工事約款は、工事請負契約用であり、設計・監理業務に関する規定が不足しており、設計施工一括受注用には、相応しくなくこの約款が適しています。
Q この約款は、増改築、リフォーム、リニューアル工事でも使えるのですか?
A あくまでも新築工事を想定しており、増改築、リフォーム、リニューアル工事での使用は想定していません。
Q 設計契約書と工事請負等契約書を同時に結んではいけませんか?
A 本来、建物の工事請負契約は、設計の内容(建物の規模・仕様)が決まった後に、それを基に請負代金額及び工期を当事者間で合意して初めて締結されるものです。したがって二段階に分けての契約が必要になります。
Q 受注者が、この設計契約書又は工事請負等契約書を取り交せば、これまで受注者が行っていた、建築士法第24条の8書面の交付は不要になると言っていますが本当でしょうか?
A 改正建築士法では、300㎡超の建築物に関する設計又は工事監理に関しては、法定記載事項を記載した契約書を取り交した場合は、法第24条の8書面の交付は必要ないと規定しています。この点は、300㎡以下の建築物に関するものであっても同様です。
そして、この設計契約書には設計に関する法定記載事項が充足されており、また工事請負等契約書には工事監理に関する法定記載事項が充足されているので、これらを取り交しておけば、別途に第24条の8書面を交付する必要はありません。
Q 契約書に建築士事務所の情報を記載する欄がありますが、今回、受注者はこの欄を空欄のままで記名押印欄に判子を押してきました。これでも良いのでしょうか?
A 改正建築士法では、建築士事務所の名称、所在地、級別並びに開設者の氏名又は名称、登録番号を記載した契約書を取り交すことが義務化されました(300㎡超の建築物の場合)。したがって、改正建築士法の下では、建築士事務所の情報を記載する欄をブランクのまま契約することはできません。
Q 受注者(法人)は、契約書に開設者(法人の場合は代表者)とは異なる支店長名で記名押印してきました。これでも良いのでしょうか?
A 受注者(法人)の内部において、当該代表者から正当に契約締結権限を授権されている者であれば誰でも構いません。不安であれば代表者からの委任状を提出してもらってもよいかもしれません。

2.工事の施工中

(1)工事監理

Q 工事監理とは、誰がどのようなことを行うのですか?
A 約款第5条により、受注者の社員のうち、建築士法に定める資格を有する者が選定され、その者が建築士として、a~cに記載した工事監理業務を行うことになります。
Q 契約時に合意した工事監理者はあまり現場にも来ず、熱心に工事監理業務を遂行しているとは思えないので交代を要求したいのですが可能でしょうか?
A 約款第7条(3)では、受注者の現場代理人、主任技術者又は監理技術者の交代に関する定めはありますが、工事監理者に関しては特に規定がありません。工事監理者は、契約書面で合意することになっていますので、交代する場合は、受注者の同意を得て、書面による変更契約を締結する必要があります。

(2)現場代理人

Q 受注者の現場代理人の態度が悪く、なかなか言うことを聞いてくれません。交代させることはできるでしょうか?
A 約款第7条(3)により、理由を示した書面をもって、現場代理人の交代等の必要な措置を求めることができます。ただし、恣意的なものは認められず、工事の施工又は管理に関して「著しく適当でない」と客観的に認められる必要があります。

(3)工事内容、請負代金額の変更

Q 施工中に、建物の仕様を一部変更しようと思いますが、可能ですか?
A まず、発注者は、約款第4条の定めに基づいて、設計報酬を増額した上で、設計図書等の変更を求めることができます。
そして、発注者は、約款第15条の定めに基づいて、必要により建築確認の変更申請を行ったうえで、同条(5)により工期を、また第16条(1)a.により請負代金額の変更を行い、工事の内容を変更することができます。
Q 上記により、建物の仕様を一部変更したことにより、工事監理報酬も変わるのでしょうか?
A 約款第16条(1)では、工事内容の変更があったときには、工事監理報酬額が変更される旨の規定があります。ただし、仕様を一部を変更した程度では、工事監理報酬額が変更になることは少ないと思われます。受注者と十分協議してください。
Q 受注者が、東日本大震災の影響により、工事材料・建設設備の機器の価格、労務単価が急騰したとして、請負代金額の増額を請求してきました。応じる必要があるのでしょうか?
A 約款第16条(1)b.には、工期内に予期することのできない経済事情の激変などにより、請負代金額が明らかに適当でないと認められるときは、請負代金額の変更を求めることができる旨定められています。今回の大震災の影響により、経済事情が激変したと客観的にかつ明確に認められる場合は請負代金の増額が認められる場合があります。

(4)第三者損害

Q 工事中の振動により、隣家の壁にクラックが入ってしまったが、誰が責任を取るのですか?
A 約款第10条(2)により、発注者の特別の指示がない限り、受注者が責任を負うことになります。

(5)天災不可抗力

Q 大型台風により、工事中の出来形部分が一部損壊したが、修復費用は誰が負担するのですか?
A 約款第11条(2)により、原則として受注者が負担します。ただし、同条ただし書きに規定されているように、受注者が台風の接近を予測し万全の態勢を敷いていたにも拘わらず避けられなかった損害については、当該損害が重大なものと認められる場合、発注者がその損害を負担することになります。
Q 工事中、出来形等に関して誰が保険を掛けるのですか?
A 約款第12条により、受注者が、工事出来形部分等に建設工事保険又は火災保険を付保する義務があります。

(6)工事の中止、契約の解除

Q 受注者に職人が集まらず、まだ工事が半分しか進んでいません。約束した期日に建物が完成しないのは明らかです、どうしたらよいでしょうか?
A 発注者の中止権、解除権を定める約款第19条(2)a.により、受注者が正当な理由なく、工期内に工事を完成する見込みがないと認められるときは契約を解除することができます。この場合、受注者に対して損害の賠償を求めることができます。
Q 工事を依頼している工務店の専務が暴力団と付き合いがあり、しばしばゴルフ、飲食等の接待を行っていると聞きました。どうしたらよいでしょうか?
A 約款第19条(2)e.ウに該当するので、発注者は受注者に対し書面をもって通知することにより、工事を中止するか又は契約を解除することができます。
Q 約定の中間金を支払う準備をしていたところ、当該工務店の信用不安が囁かれ始めました。どうしたらよいでしょうか?
A 約款第19条(2)d.により、受注者が支払いを停止するなどにより、工事を続行することができないおそれがあると認められるときは、工事を中止するか契約を解除することができます。
Q 約定の部分払い金の支払いが遅れそうです。受注者は、契約を解除して職人を引き上げると言っています。どうしたらよいでしょうか?
A 受注者の中止権、解除権を定める約款第20条(1)a.では、発注者が部分払いを遅滞したときは、受注者は工事を中止することができると規定されています。契約の解除は同条(4)a.により、中止期間が2ヵ月以上にならないとできませんが、中止権を発動して一旦職人を引き上げることは可能になります。

3.完成引渡し時

(1)完成検査

Q 工事が完成し受注者から完成検査を求められました。私(発注者)は素人なので、別途建築士に依頼し、私に代わって完成検査を依頼しようと思います。可能でしょうか?
A 約款第13条では、発注者が完成検査を行うことになっています。しかしながら、当然、建築士に別途依頼して、発注者に代わって、あるいは発注者と伴に完成検査に立ち会うことは可能です。

(2)引渡し・受領

Q 工事が完成し、建物の引渡しは受けたのですが、完成図の引渡しを受けていません。受注者に完成図を請求できますか?
A 約款第14条(1)により、契約の目的物である建物の引渡しと同時に、建物の完成状態を表す完成図の引渡しを要求することができます。
Q 工事の完成が1ヵ月遅れそうです。仮移転先は両親の家なので家賃の増加等の直接の損害はありません。違約金は貰えるのでしょうか?
A 約款第17条(1)により、遅滞日数に応じて、工事請負代金額に対し年率10%の違約金(遅延損害金)を請求できます。直接の損害を証明する必要はありません。

(3)工事請負代金支払い

Q 母屋の工事はほぼ完成したのですが、附属建物がまだ完成していません。竣工払い金の全額の支払いをストップしても構いませんか?
A 約款第14条(1)において、契約目的物(+完成図)の引渡しと請負代金の支払いは同時履行となっています。基本的には全額をストップすることができます。

4.引渡し・受領後

(1)瑕疵担保責任

Q 住宅(木造軸組み)の引渡しを受けてから3年経ちましたが、先日の大雨で屋根からかなりひどい雨漏りがありました。受注者に修補してもらうことは可能ですか。
A 瑕疵担保責任に関する規定は約款第18条になります。瑕疵担保期間は以下の通りになっています。
①木造建物   5年
②鉄骨造、コンクリート造等   10年
③建築設備の機器、内装仕上材、造作等  1年
④新築住宅の場合の基本構造部分  10年
Q 新築木造住宅の引渡しを受けてから3年経ちましたが、柱及び基礎部分に重大な瑕疵が発生しました。補修を請求したいのですが、当時の工務店(受注者)は、1年前に倒産しておりもう存在しません。修補するには莫大な費用が必要です。どうしたらよいですか?
A 工事請負等契約書6.「特定住宅建設瑕疵担保責任の履行に関する事項」において、当時工務店が取った資力確保措置の内容が記載されています。工務店が責任保険の加入で対応した場合は、保険法人の名称と保険金額の記載があるので、当該保険法人に連絡してください。工務店が倒産していても、保険金額の範囲で補償を受けることができます。
工務店が保証金の供託で対応した場合は、当時工務店から書面で供託所の所在地、名称が通知されているはずですから、当該供託所に連絡してください。供託金の範囲で補償を受けることができます。

(2)維持管理・アフターサービス

Q 建物の竣工時に、受注者から「アフターサービス規準」なるものを渡されました。
これには、細かな部分ごとに不具合の内容、保証期間等が記載されています。子供がいたずらをしてボイラー部分の壁を壊してしまいました。アフターサービス規準により無償で直してもらえるのでしょうか?
A アフターサービスがついているからといって、発注者の責めに帰すべき理由によるものは無償補修できません。瑕疵担保責任に基づく修補も同様です。
 

約款・書式

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